ちょっといい話


こんにちは。
 
さて、39年前、当時、鉄鋼会社の社員だった私が、エジプト・アレキサンドリアの
ANSDK社という「エジプト・日本合弁の製鉄所」に赴任した際、
現地で、仲間と創刊した
「イザイヤック(=「ご機嫌いかがですか?」もしくは
「お元気ですか?(という意味のアラビア語)」
という名の広報誌の現物を入手しましたので、
その中に載っていた「私の投稿した記事」の中から、
先に「トイレットはトイレにあらず」を、
その第1弾として披露しました。
 
今回はその第2弾として、「ちょっといい話」を披露します。
海外でもどこでもこういうことがあると「人生悪くない」と感じます。
                        
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       ちょっといい話
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このところのちょっと異常とも言われるエジプトの暑い夏に日夜悩まされながら、
仕事に励んでおられる我がANSDK同朋諸氏に、
聞く人を少し爽やかな気分にしてくれる「ちょっといい話」をご紹介しましょう。
 
3月末に私が家族(女房と6歳の息子と5歳の娘)とスペイン観光に出かけた際、
マドリッドで女房がショルダーバッグのひったくり事件に遭ったことは
もうお話ししましたっけ?
今回の話は実はこの事件と深いかかわりあいがあります。
 
マドリッドのブティックで買い物をした後、スペインを訪れる者の常として、
古都トレドへのバスツアーに参加したのですが、
そのトレドで女房は別のツアーで来ておられたAさんという
上品な中年の婦人と知り合いになりました。
Aさんがカメラを忘れて困っておられたのを女房が気の毒がって
何枚か写真を撮ってあげたのがキッカケだったように記憶しています。
 
そのAさんはトレドから他へまわられたので、女房はAさんから住所を聞き、
後で写真を送ることを約束して別れたのですが、そのあとマドリッドへ戻り、
有名な「ノミの市」を見物して歩いていた時、ひったくり事件に遭ったわけです。

幸いパスポートやクレジットカード等貴重品は身に着けていたので
無事だったのですが、マドリッドで買ったばかりのショルダーバッグと
その中に入っていた現金(私に黙って女房が持っていたヘソクリの10万円)、
そしてAさんの住所を記入した住所録が盗難に遭ってしまったのです。
 
エジプトに帰ってきてからも女房は、
ショルダーバッグやヘソクリについては比較的簡単に諦めたのですが、
住所録が無くなってAさんとの約束が果たせなくなってしまったことを
気にして止みません。
私が女房に「旅先で写真を撮ったり撮られたりはよくある話で、
相手だってそう期待していない。ましてや今回は盗難という不可抗力に
よるものだから、誰だってどうしようもないよ」と慰めても納得しません。
 
とうとう、色々考えた女房は、前後の事情を書いた手紙を朝日新聞社の社会部に送り、
「何とか練馬区に住むAさんという幼稚園の先生(それだけが知っていることの全てでした)
を探してください」と依頼したのです。
 
その後、新聞社の方からは何の音沙汰もありませんでしたので、
「やっぱりあんな些細なことを新聞社が取り上げてくれるはずはないし、
万が一、取り上げてくれたところで、あの程度の手がかりからAさんを
探し出すなんてとても無理な相談だろう」
と思って、それっきり、私も女房も忘れていました。
 
それがつい先日(7月14日)、ひょっこり朝日新聞社の方から返事の手紙があり、
それには「返事が遅くなって申し訳ない」との丁寧な断り書きと共に、
以下のような内容が記されていました。
 
(1)手紙をもらったものの新聞社としては原則としてこの種の探しものは
   取り上げていない。しかし、それでは気の毒なので、
   何とか他の手段でAさんを探し出すことが出来ないだろうかと
   区役所等を当たったが、お役所仕事でいつまでたってもラチがあかない。
(2)そこで最後の手段として,趣旨は少し異なるが、東京版の「小さなかけ橋」
   という欄で取り上げ、「豊岡さんという人がAさんという幼稚園の先生を
   探している」旨掲載したら、たまたまAさんの友人がこの記事を見ていて
   Aさん本人と連絡が取れた。
(3)Aさんは非常に喜ばれ、かつ「写真を待っている」とのことだったので、
   写真を送ってあげて欲しい
 
この朝日新聞社からの便りには、Aさんから女房への手紙も添えてあり、それには
「エジプトという遠い所に住む人が、たまたま旅先で知り合っただけのことで、
盗難に遭って、住所録を紛失しながらも、新聞社に呼び掛けてまで約束を果たそうとして
いることを知って深い感動を覚えた」旨、したためてありました。
 
この話を女房から聞いて、「近頃にない、いい話しだ」と私は思ったのですが、
皆さんはいかがでしょうか?
 
こんな些細なことを新聞社が真面目に取り上げてくれたこと、
そうまでして人との約束を守ろうとした女房の律義さ(いささか手前ミソですが)、
そしてたまたま新聞に掲載された小さな記事が友人の目にとまって
本人と連絡が取れたというラッキーさ・・・

いずれも全てなかなかいいですよね。
 
この話はすぐ宮脇GMや白石DMに伝わって
「話題と潤いの乏しいこのエジプトの地で、
近頃に無いいい話だから是非大々的にイザイヤックに載せよう」
ということになり、今回、皆さんにご紹介する運びになった次第です。
 
(当時)1988年9月5日  ANSDK  AD  豊岡 宏
 
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「イザイヤック」誌に掲載された私の投稿記事は、
先の「トイレットはトイレにあらず」と今回の「ちょっといい話」の2本です。
しかし、この2本の記事の載った39年前の貴重な「イザイヤック」誌の現物が入手できたこと、
それもまた「ちょっといい話」と言えるかもしれません。
 
(著作権・トラブル防止等の観点から、原文を一部、修正・変更しています)



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