【ギリシア・アテネの暑い夏】



豊岡です。 

おはようございます。

 

8月も末というのに相変わらず暑いですね。

ギラギラと太陽が照りつける真夏の暑さに毎日うだっています。

 

心なしか鳴いている周囲の蝉の声も例年にも増して元気が良く、

一層ミンミンと声を張り上げているような気がします。

 

しかし35年前、ギリシア・アテネで過ごした夏はもっと暑く、

また蝉の声も一段と大きかったような気がします。

 

今日は、その時の話しを書いてみたいと思います。

 

 

35年前の夏、当時、エジプトのアレクサンドリアに赴任していた私は、

職場のグループ旅行で家族とアテネにいました。

 

アテネ中心部のシンタグマ広場近くのホテルに投宿した私たちは、

翌日のエーゲ海クルーズを前に自由行動となったその日、

皆でパルテノン神殿や国会議事堂などアテネ市内の観光名所を

歩いて見て回りました。

 

その日は非常に暑く、また街路樹に真っ黒い大きな蝉が

たくさんたかっていて、それがワ~ンと大きな声で鳴いていたのを

よく覚えています。

 

一通り皆と観光名所を回った後、その疲れと暑さから、

私の家族だけまだ日が高いうちに観光は打ちきって皆と別れ、

ホテル2階の一番端に割り当てられた自分達の部屋に戻りました。

 

冷房の効いた部屋に入った途端、

「それでも風呂だけは入れておかなくっちゃ」

と言っている女房を尻目に、私と子供2人は

バタンキューですぐ寝てしまいました。

 

しばらくして目が覚めると横で女房と子供がぐっすり眠っているものの

なんとなく辺りの様子がおかしい。

 

ハッと思って周囲を見渡すと部屋の床がヒタヒタのお湯に浸され、

バスルームの中からお湯をバスに注ぐ音が聞こえてきます。

 

慌ててバスルームを覗くと、お湯をバスに注ぐ蛇口が開きっぱなしになっていて、

バスから溢れたお湯がバスルーム内に溢れ出しています。

 

お湯は更にバスルームから部屋に流れ込んで床を浸し、

床を浸したお湯の水位がドアの敷居の高さを超えたため、

敷居とドアの隙間から廊下に溢れ出しています。

 

女房がバスにお湯を注ぎっぱなしにしたまま疲れから

寝込んでしまったのです。

 

仰天して女房をたたき起し、ドアを開けて外の光景を見た時の驚きと

狼狽をどう表現したらいいでしょうか。

 

部屋から溢れ出たお湯が湖となり、2階の端にある私たちの部屋の前から

続く長い廊下のはるか先にある階段に向かって廊下をヒタヒタと浸し、

お湯は階段のところまで達して、今まさに1階に向かって

瀑布となって流れ落ちんばかりになっています。

 

一瞬絶望的な思いに捕らわれて

「日本人観光客、アテネのホテルを水浸し」

と新聞に大きな見出しがデカデカと躍っている様子が

脳裏に浮かびましたが、そんなことにでもなったら国辱モノです。

 

それから私と女房の必死の悪戦苦闘が始まりました。

 

ともかく廊下の向こうまで溢れ出ている大量のお湯を

なんとかしないといけない。

 

バスルームや手荷物の中にあるタオル地や布類を

全部掻き集めて溢れたお湯を私がひたすら拭き、

女房がそれをバスルームで絞って流す・・・

 

この作業を延々と4時間続けました。

 

私と女房がこの作業でヘトヘトになった頃、

廊下と部屋に溢れた大量のお湯は綺麗に拭い去られて消え、

後にはピカピカに拭かれた廊下と部屋の床が残りましたが、

お湯が溢れた動かぬ証拠として、濡れた部分とそうでない部分との

境界線がくっきりと跡に残りました。

 

しかしこの証拠隠滅(?)の為の4時間の作業中、

廊下にどの部屋からも人は出てこず、また1階からも上がって来ず、

誰にも見咎められなかったのは不幸中の幸いでした。

 

境界線以外「洪水」の跡は綺麗に消えましたので

「これで大丈夫」とは思ったのですが、

それでも、アレキサンドリアに帰ってからも

「ホテルから請求書が追いかけてくるのではないか」

と少し不安でした。

 

散々な目にあったアテネの暑い夏から35年が経ち、

当時のことは今となってはなつかしい思い出です。


結局アテネから請求書は届きませんでしたし、

届いたところでそんなものはとっくの昔に時効です。

 

ゆえにご紹介したような次第ですが、アレキサンドリア赴任中、

このような旅先での失敗談は数限りなくあります。

 

しかし後になってみると不思議なもので、何もなく無事に終わった旅行より、

何故かそういう色々と失敗があった旅行の方が印象深くてなつかしい。

 

旅とは人生と同じで色々なことがあるからこそ後から

振り返ってみて面白い。

 

私はそう思うのですが皆様はいかがでしょうか。

 

それではまた。






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