【丸貧と丸金】



こんばんは。


今日はこれまでと志向をガラリと変えて、

「私はこれまで余りお金には縁がない人生を送ってきましたが、

その中で過去、エジプトに赴任していた2年間だけは超リッチだった」

というお話しをしたいと思います。


            「丸貧と丸金」


以前、お話ししたことがあったかと思いますが、

私と女房は小学校1年の時の同級生です。

そしてウサギ年生まれ。

結婚して社宅に入居した時、二人がともにウサギ年生れで

あることを知った管理人のおばちゃんから、

「こりゃぁお金が溜まらんわ」と言われたことをよく覚えています。


このおばちゃんによると、「ネズミ年生れの人はネズミが食べ物を

溜めこむようにお金が溜まる」のに対して、

「ウサギ年生れの人は、手元からお金がウサギのように

ぴょんぴょん飛んで出ていくのでお金が溜まらない」のだそうです。

ましてや夫婦二人ともウサギ年生まれときては、

「こりゃぁ絶望的にお金が溜まらんわ」というわけです。


今から考えると、このおばちゃんの予言はピッタリ適中していて、

夫婦二人とも、後先のことを余り考えないで、

入ったお金をパッパッと使ってしまうような性格ですから、

お金が溜まるはずはなく、いつもピーピーしていました。


そうした性格は生れついてのものですから治るはずもなく、

未だにお金は溜まりませんが、私達の40数年のそうした

「丸貧」の結婚生活の中で、唯一つ「丸金」だったと思えるのが、

エジプト・アレキサンドリアに赴任していた2年間です。


今はどうか知りませんが、私達がエジプトに赴任していた35年前は

留学や海外赴任をすると、それまで国内で支払われていた給与に加えて、

現地手当が支給されるのが普通で、つつましく生活すると

この現地手当だけで十分やっていけました。


そのため、留学や海外赴任で2~3年海外で暮らすと、その期間の

国内給与はほとんど手つかずで残りますので、

「日本に帰ってからそのお金を頭金にしてマイホームを建てた」

という話しをよく聴きました。 


しかしアレキサンドリアでの私の業務はいわゆるアドミで、同時期

に赴任した単身赴任者の方の面倒を見るのが主な仕事の1つでした。


そこで、砂漠の中にあって娯楽も何もない製鉄所の官舎に単身赴任して

無聊を囲っておられる日本鋼管・神戸製鋼・トーメン3社

(アレキサンドリアのプロジェクトは、国連傘下の世界銀行とエジプト政府が

合同で実施したこのプロジェクトの競争入札に、

上記3社が日本連合を組んで応札・落札したもので、当時、

この3社から多くの職員がアレキサンドリアに赴任していました)の50人前後の方を、

10人ずつ交互に、赴任期間中、毎週金曜日(日本の日曜日に相当します)に、

自宅に招いて日本食とお酒でおもてなしをするようにしましたが、そのため、

現地手当だけでなく、国内で支給されていた給与も全部使いました。


当時のアレキサンドリアでは日本食の材料になるようなものは非常に

高価でした。

またエジプトはイスラムで禁酒の国ですから、お酒は闇で購入する

しかなく、これまた非常に高価でした。

それを毎週10人分ずつ大量に購入するわけですから、現地手当だけでは

とても足りず、国内で支給された給料も全部使わざるを得なかったのです。


それでも日本から単身赴任されている方々をおもてなしするのに、

お酒と女房の手料理の日本食に勝るものはなく、現に皆さん非常に

喜んでくださいました。


その購入資金を確保するため、毎月、日本国内の銀行に振り込まれ

ている給与をドルに替えてエジプト国内の銀行に送金し、

それを現地通貨のエジプトポンドに替えて受け取るようにしたのですが、

現地のエジプト人の方が銀行で受け取る給与のエジプトポンドの

紙幣の厚さがせいぜい数ミリなのに対し、私の受け取るそれは

いつも数センチ単位でしたので、何か申し訳ないような気がしたものです。


しかし日本の給料を、物価が10分の1のエジプトで使ったのですから、

物凄くお金の使いでがありました。


物価が10分の1になるということは「お金の使用価値が10倍に増える」、

つまり給料が一挙に10倍になるようなものだからです。


日本から送金した給与は、日本食材やお酒の購入の他、

エジプト内外を旅行して回る費用などにも充てましたが、

あの時ほどお金に不自由しなかったことは、後にも先にも記憶にありません。


まさにアラビアンナイトの世界で、

その気になればいつでもどこでも必要なだけお金が地から湧いて出てくる・・・


そんな感じでしたが、他の赴任者の方とは異なり、

全くお金は残りませんでした。


私達夫婦はきっとあのエジプト・アレキサンドリアに赴任していた2年間で、

一生分の金運を使い果たしてしまったのでしょう。

だから日本に帰ってから今に至るまで「丸貧」で、

お金には全く縁のない毎日を送っています。


しかし、エジプト時代の2年間、財を投じて単身赴任者に尽くしたことは、

その後の私の信用に繋がったように思います。


その結果、私はその2年間で自分の天職を見つけ、

また一生付き合っていける上司・友人・仲間を得ましたが、

それは私のその後の人生で、何事にも代えがたい大きな財産となりました。


勿論、エジプト時代、私達夫婦はそのようなことを考えながら

散財したわけではなく、ただその時与えられた職務を果たすために

出来ることをしただけなのですが、結果として一番良いお金の使い方を

したのかもしれません。


お金は使うものであって使われるものではない・・・


相変わらずお金には縁のない毎日を送りながら、

私はそのように嘯いているのですが、皆様はいかがお考えでしょうか。


それではまた。






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